2021年2月13日(土)、NPO法人 えんぱわめんと堺/ESさんが主催された上野千鶴子先生の講演は、時勢によりオンラインとなった。
が、先生を独り占めしているような気分になれたのも事実で、「オンライン、ありがとう!」でした。
「東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ」遥洋子著:ちくま文庫(2004年)
関西では馴染みのあるタレント、遥洋子さんの発言が他の人と違って面白く、気になっていた。その遥さんが東大で学ぶ先生・・・どんな人なのだろうと興味を持った。
その先生が大きな話題になったのは、「バズった」とご本人がおっしゃっていた、2019年4月東京大学入学式での祝辞である。
https://www.u-tokyo.ac.jp/ja/about/president/b_message31_03.html
取り上げられることが多かったのは、
「・・・あなたの恵まれた環境と能力を恵まれない人を貶めるためにではなく、恵まれない人々を助けるために使ってください」というフレーズだった。
しかし、その後にこう続く。
「そして強がらず、自分の弱さを認め、支え合って生きてください。女性学を生んだのはフェミニズムという女性運動ですが、フェミニズムはけっして女も男のようにふるまいたいとか、弱者が強者になりたいという思想ではありません。フェミニズムは弱者が弱者のままで尊重されることを求める思想です」
「ノブレスオブリージュ=高貴な人にはそれに応じた義務があるという道徳観」と捉えられることが多かったそうだ。
全文を読むと、先生のメッセージがそれだけではないことに気づく。
今回の先生の言葉でハッとしたことはいくつもあったのだけど、印象に残った2点を主観として記したい。
1.ASPIRATION の COOLING DOWN(意欲の冷却効果)
学びたい意欲を冷ます言葉、足をひっぱる言葉、かけられた経験はないだろうか。
最近聞いた、女子高校生の娘さんがいるお母さんの言葉を思い出した。
「うちは女の子だから短大で充分」「女の子だから自宅から通えるところでいい」
私より随分年下のお母さんだ。驚いた。男子には投資するが、女子には投資しない・・・そんな風潮、今はどうだろうか。
2.HIDDEN CURRICULUM(隠れたカリキュラム)
〇〇長は男子、副〇〇長は女子など、隠れた、隠された当たり前はないだろうか。
GENDERを再生産するためにやってきた、隠れたカリキュラム。
東京五輪組織委員会で起こった今回の会長辞任に至るプロセスは、GENDERへの関心・意識を一気に集めることになった。これからを生きる人たちへの隠れたカリキュラムはないほうがいい。
2020年12月25日、閣議決定された今後5年間の女性政策をまとめた男女共同参画基本計画から「夫婦別姓」という文言が削除され、指導的地位に占める女性割合「2030」も「2020年代のできるだけ早いうちに・・・」と後退。行く先の見通しは厳しい。
上野先生が講義最後にくださったメッセージ。
例えば、家庭科の男女共修も、男女混合名簿もそれまでの当たり前を、先生たちが少しずつ闘って変えてきたことを忘れないでほしい。
(それまで男子は電気・機械、女子は被服・食物と男女別に授業を受けていたが、1993年から中学校で、1994年から高校で家庭科として男女共修となった)
「この程度のことで目くじらを立てるのか」と言われても、声を挙げ続けて少しずつ社会を変えてきたのだ。
今回の東京五輪組織委員会会長発言では、#「わきまえない女たち」は、性別を超えて多くの共感をよんだ。
上野先生は中心となっている「がまんをしない」娘たちを育てた母親世代の功績は大きいと結んだ。
その上で、
GENDER差別をしていることに気づけない人を変えるのは、年齢が高くなればなるほど難しい。大事なのは、「周囲の人たちが変わっていくこと」。
そして「おかしい」と感じたときは、「そのとき、その場で、イエローカード!」
めんどくさい女、わきまえない女が増えることで社会は変わる。
上野千鶴子先生といえば、日本の女性学のパイオニア。抵抗記事も目にするが、今もジェンダー問題の最前線で活動していらっしゃる。届けてくださる言葉はシンプルで、腑に落ちる。バックグラウンドに経験がある。
これからの世代に何を引き継ぎ、何を終わりにしたいのか。ずっと考え続ける問いをいただいた。小さなことから実践する。